人は、眼でものを見る時に、左右の眼で少しずつ異なった視点の状態で見ています。 3D映像は左右で異なる視点、すなわち視差がついた映像が必要で、左右の映像を頭の中で合成することによって、空間の奥行き感や立体感を認識しています。 見やすい3D映像を制作する為に、左右の映像に対して気をつけたい6つのポイントを次に示します。

「見やすい3D映像制作のための留意点」
  1. 正しい視差調整
  2. 適正な構図
  3. 垂直方向のずれ
  4. 画角のずれ
  5. 明るさ・色の違い
  6. 回転のずれ
3D映像は正しく制作しないと、映像を立体的に見られなかったり、目の疲れなどを起こす可能性があります。

一体型二眼式3Dカメラレコーダー AG-3DA1は、この6つのポイントのうち、「垂直方向のずれ、画角のずれ、明るさ・色の違い、回転のずれ」の4つのポイントを解決しています。 AG-3DA1を使えば、3D撮影を簡単に行うことができますが、見やすい3D映像を撮影する為には、次の残り2つのポイントに注意する必要があります。

  1. 正しい視差調整
  2. 適正な構図



正しい視差調整の方法

3D撮影では、左右のレンズ光軸の交差する点が、 映像表示をした時のディスプレイ面(基準面)となります。 このレンズ光軸が交差する点をコンバージェンスポイントと言います。
AG-3DA1は、コンバージェンスポイントの設定位置を動かすことによって、被写体の飛び出し感や奥行き感といった視差を調整することが出来ます。

コンバージェンスポイントはAG-3DA1のLCDモニター上で、左眼用映像と右眼用映像を重ねて表示した場合、 左右の映像が一致している部分で確認出来ます。飛び出し感や奥行き感の視差は、左右の映像のずれ幅で見ることができます。

左右の映像のずれ幅が大きくなり、飛び出し感や奥行き感の視差が強くつきすぎていると、立体像を正しく見られない可能性があります。正しい視差を作るには、正しく立体的に見られる適正の範囲内に視差がおさまるように、左右の映像のずれ幅の調整を行なうことが必要です。
左右の映像のディスプレイ上の適正なずれ幅の長さは、映像を表示するディスプレイサイズによって変化します。視差の調整は、完成映像を表示するディスプレイサイズを想定して、左右の映像のずれ幅を、 正しく立体的に見られる適正な範囲内におさめるようにします。

ディスプレイサイズが不確定の場合は、想定されるディスプレイサイズの最大の大きさで視差の調整を行ないます。ディスプレイサイズがおよそ77型未満の場合、左右の映像のずれ幅は、飛び出し感、奥行き感共に、 ディスプレイの横幅の3%以内におさめるようにします。 例えば、50型ディスプレイの場合、横幅は1100mmで、ディスプレイの横幅の3%は33mmになるので、 飛び出し感と奥行き感の視差は33mm以内にずれ幅をおさめるようにします。



また、ディスプレイサイズがおよそ77型以上である場合、飛び出し感はディスプレイの横幅の3%以内ですが、奥行き感は50mm以内におさめるように調整を行ないます。
例えば、103型ディスプレイの場合、飛び出し感は68mm以内、奥行き感は50mm以内におさめるようにずれ幅の調整を行ないます。
なぜ奥行き感のずれ幅が50mm以内なのかというと、奥行き感を出すずれ方は、左眼用映像は左側に、右眼用映像は右側にずれており、 このずれ幅が人の目の幅より越えてしまうと、人の目は外側には開かないので、目に負担をかけてしまう可能性があります。


人の目の幅には個人差があり、子供の目の幅のことも考えると、奥行き感のずれ幅はなるべく50mm以内におさめるように調整を行ないます。 正しく立体的に見られる適正な範囲内におさえても、被写体によって視差が強いと感じる場合があるので、 視差を調整する際には注意が必要です。




Panasonicの25.5型 3D LCDビデオモニター BT-3DL2550は、クロスハッチ・グリッドの表示が出来ます。 グリッドは、モニターの横幅の6%のサイズなので、左右の映像を重ねて表示し、左右の映像のずれ幅が、グリッド幅の半分になっているかどうかで確認を行うと便利です。
カメラと被写体の距離とコンバージェンスポイントの設定位置は、 正しく立体的に見られる適正な範囲と関係してくるので、注意が必要です。




下表は、AG-3DA1での撮影において、正しく立体的に見られる適正な範囲を、カメラから被写体までの距離で表した表です。(ディスプレイサイズが77型未満の場合)コンバージェンスポイントとズームポジションの設定数値によって、距離の範囲は変化していきます。


AG-3DA1では、コンバージェンスポイントの数値を「C」、ズームポジションの数値を「Z」で表します。 例えば、コンバージェンスポイントがC60でズームポジションがZ60の場合、 カメラから一番近い被写体の距離は2.9m、カメラから一番遠い被写体の距離は64mです。
2.9mから64mの距離範囲内にある被写体は、立体像として快適に見る事が出来ます。 カメラと被写体の距離関係に注意して3D撮影を行って下さい。



適正な構図で撮る

3D撮影では、左右の映像に視点の違いがあることにより、片目だけでしか認識出来ないものがある構図の場合、立体像として正しく見ることができない時があります。
例えば、ディスプレイより前に飛び出した被写体が、動いてフレームアウトをしたとき、左右の映像で被写体の映り方が異なる為、違和感を感じる可能性があります。

また、木漏れ日、ヘッドライトなどの光や、光を反射するガラスや水などは、光の映り方が左右の映像で異なる場合があります。3D撮影で、映像の構図を決めるときには注意が必要です。AG-3DA1で左右の映像の構図を確認したい時、LCDモニター上に左右の映像をそれぞれ切り替えて表示する事が出来ます。



その他のポイント

被写体のコントラスト

またその他に、より良く、見やすい3D映像を制作する為の注意ポイントがあります。視差がついている被写体の中で、コントラストの差が極端についている3D映像は、表示するディスプレイによって2重像が発生する可能性があります。
これは、ディスプレイ上で、右眼用の映像が左に、左眼用の映像が右にもれてしまうことによって起こる、クロストークという現象です。
コントラストの差が大きくついている被写体を撮影した場合は、完成映像を表示する3Dモニターなどで確認を行なうことが必要です。


編集を考えた視差調整
カットチェンジごとに極端に飛び出し感と奥行き感の視差がついた3D映像は、立体像を正しく見ることができなかったり、目の疲れなどが起こる可能性があります。 3D撮影の際は、編集時に並べるカットの順番のことも考えて視差調整を行なうと、より良く見やすい3D映像に繋がります。




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